怒りと向き合うワークブック

心に溜まった許せない感情を紙に書き出す具体的な方法

Tags: 怒り, 悲しみ, 感情整理, 書き出しワーク, セルフケア

心の中に、どうしても許せない怒りや悲しみ、過去の後悔などが溜まっている。そういった感情を誰かに話すのは難しく、一人で抱え込んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

感情はエネルギーです。心の中に溜まりすぎると、それは時に私たちを苦しめ、体の不調や心の疲弊につながることもあります。しかし、感情を無理に抑え込んだり、見て見ぬふりをしたりしても、それはなくなるわけではありません。

ここでは、心に溜まった許せない感情に、ご自身のペースで向き合い、整理するための「紙に書き出す」という方法をご紹介します。特別な技術は必要ありません。紙とペンさえあれば、いつでもどこでも始められる、自分自身のためのワークです。

心に溜まった感情を書き出すことの目的

心に溜まった感情を紙に書き出すことには、いくつかの大切な目的があります。

  1. 感情の「見える化」: 頭の中でぐるぐる考えているだけでは、感情は漠然とした塊のままです。紙に書き出すことで、自分が何を感じているのか、具体的にどのような言葉で表現できるのかが「見える化」されます。
  2. 心の負担軽減: 感情を外に出す行為そのものが、心に溜まった圧力を少しずつ解放してくれます。まるで、ぎゅうぎゅう詰めの荷物を一度外に出して広げるようなものです。
  3. 客観的な視点: 書き出した感情を後から読み返すことで、まるで他人のことのように少し距離を置いて見られることがあります。これにより、感情に飲み込まれることなく、冷静に状況を捉える手助けになります。
  4. 次のステップへの準備: 感情を書き出すことは、感情整理の第一歩です。感情が見える化されることで、「なぜそう感じるのか」「どうすればこの状況を乗り越えられるか」といった、より深い自己理解や問題解決に向けた次のステップに進みやすくなります。

紙に書き出すワークの具体的な手順

では、実際に紙とペンを使って、心に溜まった許せない感情を書き出してみましょう。以下の手順で進めてみてください。

準備するもの

手順

  1. 時間と場所を決める:

    • 誰にも邪魔されない、落ち着ける時間と場所を選びましょう。ほんの10分や15分でも構いません。
    • 毎日同じ時間に行う必要はありません。心がざわついたときや、向き合いたいと感じたときに行ってみましょう。
  2. テーマを意識する(任意):

    • 特にテーマを決めず、今心にあるものをそのまま書き出しても良いですし、「あの出来事について」「あの人に対して感じること」など、特定のテーマを決めて書き始めても良いでしょう。今回は「許せない感情」に焦点を当てているので、「心の中で許せずにいること」といったテーマを意識すると良いかもしれません。
  3. 書く内容に制限を設けない:

    • 正しい文章を書こうと思ったり、誰かに読ませるつもりで書いたりする必要は一切ありません。
    • 心に浮かんだ言葉、感情、思考をそのまま、書き殴るように書き出してください。単語だけでも、箇条書きでも、まとまった文章でも構いません。
    • 「〜と感じる」「〜と思う」といった形で、感情や思考を率直に表現しましょう。
    • 誰かへの怒り、自分自身への後悔、悲しみ、虚しさ、不安など、どんな感情が湧いてきても、それを否定せず、そのまま紙の上に置いていくイメージです。
  4. 思考停止した場合:

    • 何も書くことが思いつかなくなったり、手が止まってしまったりしたら、「何も思いつかない」「何を書けばいいか分からない」といった、今の自分の状態をそのまま書いてみましょう。
    • 沈黙もまた、感情の一部です。無理に言葉を探す必要はありません。しばらくペンを止めて、心に耳を傾けてみましょう。
  5. 書き終えたら:

    • 決めた時間になったら、あるいは書きたいことが一旦出し切れたと感じたら、書くのをやめます。
    • 書き出したものをすぐに読み返す必要はありません。気が向けば読み返しても良いですが、すぐに読み返すのが辛い場合は、そのまま置いておくか、破って捨ててしまっても構いません。誰にも見せないことが前提です。

書き出し方の例

以下のようなフォーマットを参考にすると、書き出しやすくなる場合があります。ノートの1ページを以下のように区切って使ってみるのも良いでしょう。


【日付】:YYYY年M月D日 【時間】:〇時〇分〜

【今日のテーマや、書き出したいと感じたきっかけ】: (例:Aさんの顔を思い出してイライラした、昔の失敗が頭から離れない、なんだかモヤモヤする)

【今、心にある感情や思考】: (書きたいことを自由に書き出すスペース。箇条書きでも、文章でも良い) * Aさんの言った言葉がやっぱり許せない。何度も頭の中で繰り返される。 * どうしてあの時、私は何も言えなかったのだろう。自分自身にも腹が立つ。 * この感情はいつまで続くのだろうか。疲れた。 * 悲しい。認めたくないけど、すごく悲しい。 * 本当はどうしたかった? * (空白) * もう考えたくないけど、考えてしまう。 (など、心に浮かぶままに書き続ける)


ワークに取り組む上でのポイント

このワークから期待できる効果

この書き出しワークを続けることで、次のような効果が期待できます。

さいごに

許せない感情と向き合うことは、時に辛く、大きなエネルギーを必要とします。しかし、その感情を心の中に閉じ込めたままにしておくよりも、少しずつでも外に出してあげる方が、あなたの心にとっては健康な状態と言えるでしょう。

今回ご紹介した書き出しワークは、そのための最初の一歩です。紙とペンという身近なツールを使って、ご自身のペースで、安心して心の中の感情と向き合ってみてください。焦る必要はありません。今日書き出せなくても、また明日、あるいは心が軽くなった時に、静かにペンを取ってみる。その繰り返しが、あなたの感情を整理し、心穏やかな日々を取り戻すための一助となることを願っています。