怒りと向き合うワークブック

許せない感情に付随する「思考の癖」を見つける紙での書き出しワーク

Tags: 感情整理, 書き出しワーク, 怒り, 悲しみ, 思考パターン, 認知行動療法, セルフケア

許せない感情の奥にある「思考の癖」に気づく

心の中に長く残り続ける許せない感情や悲しみは、時に私たちを深く苦しめます。なぜ、あの時の出来事や、あの人の言動が、いつまでも心から離れないのだろうかと、ご自身を責めてしまうこともあるかもしれません。

このような許せない感情は、出来事そのものだけでなく、その出来事を私たちがどのように受け止め、どのように考えているか、という「思考」と深く結びついています。感情が生まれた瞬間に、無意識のうちに頭の中に浮かぶ自動的な考えや、長年培われてきた「思考の癖」が、感情を強くしたり、長引かせたりする要因となっている場合があるのです。

この記事では、紙と筆記用具を使って、「許せない」と感じる感情に付随するご自身の思考のパターンに気づくための書き出しワークをご紹介します。このワークを通して、感情と思考のつながりを理解し、心の整理を進めるための一歩を踏み出せることを目指します。

感情と思考のパターン記録ワーク

このワークは、特定の出来事に対して感じた感情だけでなく、その時に頭の中に浮かんだ思考を具体的に書き出すことで、ご自身の認知パターン(考え方の傾向)を明らかにするためのものです。これは、認知行動療法(CBT)の基本的な考え方に基づいています。

感情は、出来事そのものによって直接引き起こされるというよりも、その出来事を私たちがどのように解釈するか、つまりどのような思考を持つかによって大きく左右されると考えられています。このワークでは、そのつながりを「見える化」します。

準備するもの

ワークの手順

紙を縦に使い、以下の3つの項目に分けて書き出していきます。真ん中に縦線を2本引き、左から「出来事」「感情」「思考」の列を作ると整理しやすくなります。

1. 出来事や状況を書き出す

許せないと感じる感情が生まれた、具体的な出来事や状況をできるだけ客観的に書き出します。「いつ」「どこで」「誰が」「何をした(言った)」など、事実に基づいた描写を心がけます。解釈や評価はここでは含めません。

2. その時に感じた感情を書き出す

ステップ1で書き出した出来事に対して、ご自身がどのような感情を抱いたかを書き出します。「怒り」「悲しみ」「失望」「悔しさ」「情けなさ」「孤独感」「不安」など、正直な気持ちを表現する言葉を探してみましょう。感情は一つだけでなく、複数感じることもあります。

3. 頭の中に浮かんだ思考を書き出す

ステップ1の出来事に対してステップ2の感情を感じたその時に、自動的に頭の中に浮かんだ考えやイメージを、そのまま書き出します。これは「〇〇であるべきだ」「私はダメだ」といった信念かもしれませんし、「どうせこうなるだろう」という予測かもしれません。自分自身の思考を客観的に観察するような気持ちで取り組みます。


ワークシートのイメージ

| 出来事(事実) | 感情 | 思考(頭に浮かんだ考え) | | :------------------------------------------- | :--------------------------------------- | :--------------------------------------------------------------------------------------- | | 昨日の夕食時、夫に私の話の途中で自分の話を始められた。 | 怒り、イライラ、悲しさ | 私の話は聞くに値しないと思っているんだ。私は軽んじられている。いつもこうだ。 | | 職場で、私の提案が何も検討されずに却下された。 | 悔しさ、無価値感、失望 | 私は能力がないからだ。頑張っても無駄だ。どうせ誰にも認めてもらえない。 | | 昔の友人から連絡がないまま、疎遠になってしまった。 | 悲しさ、寂しさ、見捨てられた感じ | 私には魅力がないからだ。誰も私を必要としない。一生一人かもしれない。 | | (例) | (例) | (例) |

※この表はあくまで書き方のイメージです。自由な形式で紙に書いていただいて構いません。


ワークに取り組む上でのポイント

期待できる効果

このワークを実践することで、以下のような効果が期待できます。

注意点

このワークの先へ

感情と思考のパターンに気づくことは、変化への第一歩です。このワークを何度か繰り返すうちに、「私はこういう状況で、こう考える傾向があるのだな」というご自身のパターンが見えてくるでしょう。

そのパターンに気づいた後、次にどうするかはご自身の自由です。すぐに考え方を変える必要はありません。ただ「気づく」だけでも、感情との付き合い方が少しずつ変わってくることがあります。

もし、ご自身の思考の癖についてもっと深く掘り下げたい、あるいは新しい考え方を取り入れてみたいと感じるようでしたら、他の記事で紹介しているワークなども参考に、さらにステップを進めていくことができます。

ご自身の感情と思考に寄り添いながら、無理のないペースで取り組んでみてください。このワークが、あなたの心の平穏を取り戻すための一助となれば幸いです。