怒りと向き合うワークブック

許せない感情に負けない自分になるための紙での書き出しワーク - 自己肯定感を育む

Tags: 許せない感情, 自己肯定感, 書き出しワーク, 感情整理, セルフケア

許せない怒りや悲しみといった感情は、時に私たちの心を深く覆い、その存在だけで自分自身を責めてしまったり、自信を失わせたりすることがあります。過去の出来事や他者への感情が、今の自分自身の価値を低く見積もってしまう原因となることも少なくありません。

しかし、そのような感情を抱えていることと、あなたの人間としての価値とは別のものです。感情は自然に湧き上がるものであり、それを抱えているからといって、あなたが「ダメな人間」であるということには繋がりません。大切なのは、感情に飲み込まれず、自分自身の肯定的な側面を見失わないことです。

この記事では、許せない感情を抱えながらも、自分自身を責めずに自己肯定感を保つための具体的な書き出しワークをご紹介します。紙と筆記用具があれば、ご自身のペースで取り組むことができます。

なぜ「自己肯定感」が大切なのか

許せない感情は、過去の出来事や他者との関係から生じることが多いものです。これらの感情に囚われると、「あの時ああしていれば」「なぜ自分だけこんな目に」「自分は理解されない存在だ」といった考えが頭を巡りやすくなります。

こうした考えは、無意識のうちに自分自身の能力や価値を否定することに繋がることがあります。「どうせ自分にはできない」「自分には価値がない」といった自己否定的な考えは、さらに心を閉ざし、前向きな行動を妨げてしまいます。

自己肯定感とは、「ありのままの自分」を肯定的に受け入れる感覚です。完璧ではない自分、失敗することもある自分、そして辛い感情を抱えている自分も含めて、「これで良いのだ」と思える力と言えるでしょう。自己肯定感が高いと、許せない感情に直面した際も、感情そのものに圧倒されることなく、自分自身の良い点や強さを見失わずにいられます。

感情を完全に消し去ることは難しいかもしれませんが、感情に「負けない」自分、感情に「振り回されない」自分を育むことは可能です。今回ご紹介するワークは、そのための具体的な一歩となるでしょう。

ワークに必要なもの

許せない感情に負けない自分になるための書き出しワーク

このワークは、今抱えている感情を整理しつつ、意図的に自分の肯定的な側面に目を向けることで、感情に引きずられがちな自己評価を立て直すことを目指します。

ステップ1:今、心にある感情を書き出す

まず、今あなたが抱えている「許せない」と感じる感情や、それに伴う悲しみ、怒り、後悔などを率直に紙に書き出してみましょう。

ここでは、感情や状況に対する良し悪しの判断は一切せず、ただ心に浮かぶままに書き出すことが重要です。箇条書きでも文章でも構いません。感じていることをそのまま受け止め、紙の上に「出す」ことに集中してください。

(例: * あの時の○○さんの言葉が許せない。怒りが込み上げる。 * どうして自分ばかりこんな目に遭うのかと悲しくなる。 * あの時、もっとうまく対応できなかった自分が悔しい。 * 体が硬くなるような感覚がある。)

ステップ2:感情に伴う自己否定的な思考を書き出す

ステップ1で書き出した感情や状況について、それが原因で、あなた自身に対してどのような否定的な考えや感情を抱いているかを書き出してみましょう。

これらの思考も、良い悪いの判断を挟まず、心に浮かぶままに書き出してください。自己否定的な考えは、しばしば感情と結びついて強く私たちを縛り付けます。それに気づくことが第一歩です。

(例: * こんなに怒りっぽい自分は人間として未熟だ。 * あの出来事を乗り越えられない自分は弱い。 * また失敗してしまった。自分は何をやってもだめだ。 * 誰にも理解してもらえない孤独な存在だ。)

ステップ3:自己否定的な思考に「本当にそうか?」と問いかける

ステップ2で書き出した自己否定的な考えに対し、少し立ち止まって「本当にそうだろうか?」と問いかけてみましょう。感情的な視点だけでなく、事実に基づいた別の側面や解釈を探します。

自分自身を弁護するような気持ちで、別の可能性や側面を書き出してみてください。これは自分を甘やかすのではなく、感情に曇らされた視点を調整するための作業です。

(例: * 「こんなに怒りっぽい自分は未熟だ」→ 確かに怒りを感じたが、それは自分の大切な価値観が傷つけられたからかもしれない。感情を感じるのは自然なことだ。完璧な人間などいない。 * 「あの出来事を乗り越えられない自分は弱い」→ まだ乗り越えられていないのは事実だが、日々その感情と向き合おうとしている。それは弱さではなく、誠実さの表れかもしれない。辛い状況でも前に進もうとする自分は強い部分も持っている。 * 「また失敗してしまった。自分は何をやってもだめだ」→ 確かに失敗はしたが、成功した経験もある。この失敗から学んだこともある。次につなげようとしている自分がいる。)

ステップ4:感情と切り離して、自分の肯定的な側面を書き出す

次に、今抱えている許せない感情や過去の出来事から一旦意識を離し、あなた自身の肯定的な側面、強み、良い点、大切にしている価値観などを意図的に見つけて書き出してみましょう。

どんなに小さなことでも構いません。感情に囚われていると見えなくなりがちな、自分自身の光る部分に意識を向けてください。過去の成功体験や、自分が努力したこと、他人を思いやったことなどを思い出してみましょう。

(例: * 困難な状況でも諦めずに努力できる。 * 人の気持ちを思いやることができる。 * 与えられた仕事は最後までやり遂げようとする。 * 家族や友人を大切に思っている。 * 一度決めたことは粘り強く続けられる。)

ステップ5:自分自身への肯定的な言葉を書き出す

ステップ4で見つけた自分の肯定的な側面に基づき、自分自身への肯定的なメッセージやアファメーション(肯定的な自己宣言)を書き出してみましょう。

これらの言葉は、声に出して読んだり、目につく場所に貼ったりするのも良いでしょう。最初は抵抗があるかもしれませんが、繰り返すことで潜在意識に働きかけ、少しずつ自己肯定感を育んでいきます。

(例: * 私は、困難な状況でも前に進もうと努力できる人間である。 * 私は、感情を抱えながらも、自分自身と丁寧に向き合っている。 * 私は、大切な人を思いやれる優しい心を持っている。 * 私は、過去の経験から学び、成長し続けている。 * 私は、ありのままの自分を受け入れることができる。)

ワークに取り組む上でのポイントと注意点

このワークで期待できる効果

最後に

許せない感情と向き合うことは、時にエネルギーを要することです。しかし、その感情に囚われ、自分自身を傷つけてしまうことは、さらに大きな苦痛となります。

今回ご紹介した書き出しワークは、感情そのものを消す魔法ではありません。しかし、感情との健全な距離を保ちながら、自分自身の価値を見失わないための、実践的なツールです。紙に書き出すというシンプルな行為を通して、ご自身の内面と丁寧に向き合い、少しずつでも自己肯定感を育んでいくことができます。

感情に負けない自分、感情と共存しながらも輝きを失わない自分を目指して、このワークがその一助となれば幸いです。ご自身のペースで、焦らず、優しく取り組んでみてください。